歩行者が道路を渡る主な手段として用意されているものは、横断歩道、歩道橋(正確には「横断歩道橋」)、地下道(正確には「地下横断歩道」)です。これら3つのうち、数として断然多いのは、もちろん、横断歩道です。そして、横断歩道以外の2つは、横断歩道の代用品と見なされ、一般に「立体横断施設」と呼ばれているようです。
これらのうち、私は、地下道をあまり好みません。少なくとも、ある程度以上の規模の都市の市街地に建設された地下道は——本来は2つの地点をつなぐ役割を担う施設であるにもかかわらず——都市の空間に断絶を持ち込むものであるように思われるからです。このような断絶は、歩道橋や横断歩道では決して生まれないものです。
東京23区内を歩いていても、道路を横断するためだけに建設された地下道に出会うことは滅多にありません。東京の場合、このような地下道があるのは、横断歩道を設定することが不可能な特別な地点に限られます。(中央分離帯のある道路を交差点以外の場所で横断するための地下道は、その代表です。)
しかし、地方都市、特に地方中小都市の市街地を歩いていると、横断歩道を設定することができないわけではないにもかかわらず、なぜか普通の交差点に(横断歩道の代わりに)地下道が設けられ、タコの足のように通路があちこちに延びているのに出会うことがあります。当然、地下道がある場合、交差点に横断歩道はありません。信号もまた、自動車用のもののみが設置されています。歩行者と自転車は地下を通行するからです。このような交差点では、地下道を避けて地上を移動することがそもそも不可能であるか、可能であるとしても、途方もない回り道を余儀なくされるのが普通です。私は、初めて訪れた街を歩いているとき、大きな交差点に出て初めて横断歩道がないことに気づき、少し後方にある地下道への入口まで戻った経験が何回もあります。(東京に慣れているせいか、「地下道への下りの階段がある」ことと「横断歩道がない」ことがどうしても結びつきません。)
交差点における横断歩道の役割を担う地下道では、当然、設置される場所が十字路なら、少なくとも4箇所の出入り口を作ることが必要となります。3本以上の道路が交わる交差点なら、必要な出入り口の数はさらに多く、地下通路はさらに複雑になるでしょう。
このような地下道は、渋滞を解消あるいは緩和するのには効果的であり、また、歩行者や自転車の安全という点からも、それなりに意義があるのかも知れません。それでも、地下横断歩道というのは、これから述べるように、都市空間の質を毀損するものであり、好ましくないと私は考えています。