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昨日、次のような文章を書きました。以下は、これに関連する話です。
小学校の5年生のころ、周囲にいた大人の誰かから、「本は決して裏切らない」と言われたことがあります。
私の記憶に間違いがなければ、この発言は、次のような文脈の内部に姿を現しました。すなわち、「人間はあなたを裏切ることがあるが、本は決してあなたを裏切らない、だから、生身の人間と付き合うこととは異なり、本を読むことは、あなたの一生の糧となる」というような話を聞いたのだと思います。
本を読むことを仕事の一部としている現在から振り返ると信じられないことに、当時の私は、普通の意味における本を一切読まず、マンガとマンガ雑誌に埋もれて暮らしていました1 。私のこの状況に危機感を抱いた大人が、本を読むように仕向けるつもりで、「本は決して裏切らない」と言ったのでしょう。
実際、この発言を今でも憶えているところを見ると、「本は決して裏切らない」という認識は、私には心の底から納得することができるものであったに違いありません。たしかに、当時の私は、今以上に他人のことを信用せず、外の世界をつねに恐怖とともに眺めていました。
それでは、「本は決して裏切らない」とはどのような意味なのでしょうか。また、本が私たちを裏切らないというのは確かなことなのでしょうか。(後篇に続く)
- 『ドラえもん』や『ブラックジャック』の新作をリアルタイムで読むことができた1970年代の終わりごろの話です。私は、一生分のマンガをこの時期に読み、そして、マンガというものを卒業してしまったような気がしています。その後も、必要に応じてマンガを手にとることがありますが、マンガを読んで何時間も過ごすようなことはありません。 [↩]