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その場にいない第三者について、私が誰かから「あれは『根はいい人』なんだよ」と聞かされるとします。この発言が私に聞かせるためのものであるかどうかには関係なく、この発言を耳にした瞬間から、私は、「根はいい人」と言い表された当の人物には近づかないよう全力で努力します。なぜなら、「根はいい人」というのは、「ろくでなし」の婉曲表現以外の何ものでもないからです。
「根はいい人」というのは、表面的には褒めるべき点が何も見当たらない者、つまり「ろくでなし」をどうしても擁護せざるをえない状況においてのみ使用される特殊な表現です。「根」なるものは、誰にも観察することができまない「隠れた性質」(qualitas occulta) ですから、任意の人物にXついて、「Xは『根はいい人』である」という文が偽であることを証明するのは権利上不可能です。言い換えるなら、形式的には、誰もが「根はいい人」なのです。「根はいい人」というのは、「ろくでなし」を擁護する切り札であると言うことができます。
もちろん、「ろくでなし」の中には、「根」まで悪い者がいる可能性があります。「根」まで悪いとは、「誰にも擁護する気を起こさせないほどの『ろくでなし』」を意味します。したがって、「根はいい人」は、「ろくでなし」の真部分集合と見なすことができるでしょう。