私は、動きが烈しい3次元の映像をしばらく眺めていると、めまいと頭痛と吐き気に襲われます。これは、一般に「3D酔い」と呼ばれる症状です。
私の場合、VRや一部のビデオゲームの画面を15分くらい眺めるだけで、この症状が姿を現し、そして、映像を見るのをやめてからも、症状が消えるまでに半日はかかります。ある日の夜に「3D酔い」の症状に襲われると、次の日の昼ごろまでは軽いめまいが残ることになります。
子どものころ、私は、乗り物、特に自動車に乗るたびに、ひどい乗り物酔いに苦しめられていました。小学校の4年生くらいまでは、普通の路線バス——なぜか路線バスでは症状が出ませんでした——以外の自動車に乗るときには、決死の覚悟でこれに臨んでいました。高速道路を長時間走る乗用車に乗せられたときなど、酔い止めの薬をあらかじめ服用していたにもかかわらず、サービスエリアを見つけるたびに車を降りて吐いたこともあります1 。
しかし、その後、何に乗っても乗り物酔いの症状がまったく出なくなりました。原因は不明です。自動車ばかりではなく、飛行機でも船でも——墜落したり沈没したりするのではないかという懸念をつねに抱いてはいるものの——乗り物酔いに苦しめられることはなくなりました。私は、ながいあいだ、あの特有の気持ちの悪さを忘れていました。
ところが、今から5年くらい前、乗り物酔いの気持ち悪さを思い出すことになりました。ある本を読んでいたとき、”Portal”という名のビデオゲームへの言及を見つけたことがきっかけです。
”Portal”は、2007年にアメリカで製作されたパズルであり、この分野では名作に数えられているようです。発売から時間が相当に経過していたせいか、価格が高くなかったこともあり、購入していじってみることにしました。
しかし、パソコンにインストールしてゲームを起動させ、操作方法を確認し、恐る恐るいじり始めてから約15分後、私は、烈しいめまいと頭痛と吐き気に襲われました。これが3D酔いの最初の体験です。症状が出たのが夜だったため、その日はそのまま床に就きましたが、症状は、翌日も残りました。これ以来、指先の操作だけで画面が上下前後左右に動くタイプのゲームには近づかないようにしています。(今では、”Portal”のロゴが視界に入るだけで軽いめまいを覚えます。)(後篇に続く)
- 後部座席に仰向けに横たわり、外を一切見ないようにすることで、症状をある程度まで抑えることができないわけではありません。実際、小学校の2年生のとき、この姿勢で乗用車に乗り、砂利道を走るあいだずっと、なぜか「九九」を唱え続けて気を紛らわせたことがあったのを覚えています。 [↩]