Home 世間話 マタニティマーク、ヘルプマークなどについて(その2)

マタニティマーク、ヘルプマークなどについて(その2)

by 清水真木

※この文章は、「マタニティマーク、ヘルプマークなどについて(その1)」の続きです。

 同じように、マタニティマークがなければ、公共の交通機関の車内で私が着席しているとき、私よりもあとに乗車してきた女性から「妊娠しているのだから席を譲ってください」と1対1で直に要求されるかも知れません。それどころか、かつて私が障害者手帳を鼻先に突き出されたのと同じように、「母子手帳」を無言で急に鼻先に突き出されたりすることもあるでしょう。しかし、これらはいずれも、席を譲るよう求められる側にとり(こちらの事情とは関係なく、有無を言わさず「どかされる」わけですから)大変に不快な体験となります。それどころか、妊娠している女性が席を譲ってもらうためにこのような行動を強いられるとするなら、よほど切実な事情があるか、あるいは、よほど傍若無人でなければ、混雑した車内で着席することを最初から諦めてしまうに違いありません。

 マタニティマークが用いられることにより、座席を譲る用意がある乗客が気づいて声を自発的にかけることが可能となるとともに、席を譲りたくなければそのまま無視することも許されるようになります。席を譲りたければ譲り、譲りたくなければ譲らないことができることほど気楽なものはなく、マタニティマークやヘルプマークは、このような状況を作り出すのに有効な手段であると言うことができます。

 なお、今から何年か前には、「マタニティマーク」や「ヘルプマーク」という現実の目印を介したこの仕組について、これをオンライン化する試みがいくつかありました1

 エクスプリシットには明らかにしにくい要求を周囲が察知してこれに反応する手段がオンラインで用意されるなら、マタニティマークを目印とする嫌がらせを受ける危険はなくなるはずです。(ヘルプマークについてもまた、事情は同じです。)

  1. 2017年の初めにイギリスのベンチャー企業は、”Babee On Board”という名のiPhone専用のアプリを開発しました。Bluetoothを使用し、混雑した車内の半径数メートルの範囲で「妊娠しており着席したい乗客」と「席を譲ってもかまわない乗客」をマッチングするものです。(譲られる側と譲る側は、それぞれ”Request Seat””Offer Seat”という異なるアプリをインストールします。)ただ、残念ながら、2022年現在、開発した企業がすでに消滅しており、このアプリもまた、App Storeでは配布されていないようです。

     また、同じ2017年12月、大日本印刷は、LINEのアカウントを利用して同じようなマッチングを可能にするシステムを開発し、東京メトロで実証実験を行いました。その様子は、下記の動画で紹介されています。

     しかし、これもまた、今のところ実用化されてはいないようです。 []

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