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私たちは誰でも、つらいことを経験した人々、生活上の悩みを抱えている人々、病気や怪我で苦しんでいる人々から何らかの相談を受けたことがあるはずです。私もまた、これまでの人生において、このような人々から直に話を聴く場面に身を置いたことが何回かあります。
もちろん、私自身は、カウンセラーではなく精神科医でもありません。したがって、何らかの苦しみを抱えている人の話を聴く「技術」(として通用している何らかの定型的な反応の束)を身につけてはいません。当然、私のふるまいが慰めや問題解決に役に立つこともないかも知れません。
それでも、私は、このような人々の話を聴くときには、1つだけ、いつも心がけていることがあります。それは、「相手の身になって聴いているふり」「寄り添っているふり」をしないことです。このような「ふり」を控えることこそ、相手を尊重し、相手をそのまま受け入れることであると信じているからです。
もちろん、困難を抱えている人々に寄り添うのは、好ましいことです。しかし、相手の身になるのは、実際に行動するときであり、話を聴くときではありません。相手が目の前にいて、苦しみや悩みを訴えているある人に対し、「よくわかります」「おっしゃるとおりです」と応じても、当人にとっては何の慰めにもなりません。むしろ、寄り添い共感しているふりをすることには、相手を依存させ、自力での問題解決の途を閉ざしてしまう危険があります1 。
- 私自身、若いころ、自分自身の問題を相談し、そして、「寄り添っているふり」をする相談相手に振り回されてひどい目に遭ったことが何度もあります。最初から、いや、それどころか、相談する前から親身になってくれるような他人には最大限の警戒が必要です。(後篇に続く)
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