以前、著作権継承者の意味について、次のような文章を書きました。以下は、これに関連する話です。
高校や大学の入試が終わる3月から夏にかけて、それぞれの学校、あるいは、入試問題を利用する出版社や予備校は、特に国語や英語の問題文の著作権の処理を始めます。入試で使用された問題文について使用許諾をとらないと、これを再利用することができないからです。
私の著作もまた、毎年、いくつかの高校や大学の入試で問題文となります。そのため、春先から夏にかけて、これに関連する書類が五月雨式に私のところに送られてきます。
具体的には、(1)私の著作の一部を問題文に使用した大学からその旨の連絡があり、大抵の場合、これとともに、(2)オープンキャンパスやネットで配布する各学校独自の「入試問題集」への収録の許諾の申請があります。さらに、(3)当該の大学の入試問題に正解を付して出版する書肆——その代表は、いわゆる「赤本」を刊行する世界思想社です——や教育関係者向けの過去問のデータベースを作成する企業から同じような許諾の申請があり、さらに、(4)予備校の教材としての使用許諾の申請がこれに続く場合もあります。
以上4つのうち、最近では、私学、特に小規模な大学のかなりの部分が、(1)(2)を業者に委託しています。実際、複数の大学の入試における使用の報告と再利用の許諾申請が1つの封筒にまとめられて届く場合があります。
なお、これは以前から不思議に感じていた点ですが、国公立大学は、著作者に対しなぜか(1)の通知を原則として行いません。世界思想社から「赤本」への問題文の採録の申請があって初めて、いずれかの国立大学の入試で使用されたことがわかることもあります。
また、(2)についても、国立大学は、私が作品の使用を認める場合には、独特の面倒な書類の作成することを要求します。国立大学から届く書類が煩雑なのは、内部での会計処理に必要な——当然、学内向けの——書類一式がそのまま送りつけられてくる——このあたり、ものすごく「国立大学的」(?)です——からであるに違いありません。
作品の使用を認めない場合に面倒な書類を作らされるのならわかりますが、実際には、国立大学の場合、反対に、作品の使用を認めると面倒なことになります。これは、いくら体験しても慣れません。
ところで、すでに公刊された著作の一部を再利用する場合、著作者に許諾を求めることが必要となります。これは、著作権法が要求する手続きであり、入試のような特殊な場合を除き、許諾の申請は事前に行うのが原則となっています。(著作者が許諾しない可能性があるからです。)入試において問題文として使用された作品に限らず、すべてについて仕組は同じです。