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入浴への執着について

by 清水真木

 私は、風呂に入ることがあまり好きではありません。正確に言い換えるなら、私の場合、浴槽に入って湯に浸かるという行動の優先順位は高くありません。私にとり、入浴とはシャワーを浴びることであり、季節には関係なく、浴槽を使うのは、多いときでも月に2回か3回にとどまります。風呂に入ることを積極的に忌避しているわけではありませんが、それでも、入浴は、それ自体として特に楽しい行動ではありませんから、風呂が限りのある時間と体力を優先的に使うに値するものかと問われるなら、私の答えは「否」です。

 夕方以降に風呂に入ると、体力を消耗するのか、それとも、ホルモンのバランスや自律神経が乱れるのか、翌日は一日中、体調がよくないのが普通です。したがって、デッドラインが近い仕事を抱えていたり、どうしても休めない仕事が翌日に控えていたりするときには、風呂には決して入らないことにしています。

 ところで、国内旅行を案内するガイドブック、テレビ番組、ネット上で配信される動画などでは、温泉地が好んで取り上げられます。 多くの日本人が——また、外国人観光客の多くも——いかにも「日本的なもの」として理解するものには、温泉が要素として含まれるのが普通です。たしかに、わが国の各地にある温泉地や温泉街は、特殊日本的なものであると言うことができます。また、温泉地や温泉街が全国にあるという事実を、温泉に対する大きな需要の証拠と見なすことも可能です。

 しかし、上に述べたような事情を考慮するなら当然のことですが、私自身は、温泉地を旅行の目的地とすることはありません。また、旅先で温泉に浸かりたいとも思いません。「星空が見える露天風呂」「秘湯の一軒宿」などのワードは、残念ながら、私の心には響きません。

 たしかに、体調を崩してその後の予定が変更を余儀なくされるなど、普段の生活でも好ましいことではありません。この意味で、旅先において体調の維持をすべてに優先し、温泉を忌避するのは合理的です。それでも、温泉に魅力を感じない私は、日本的ではないのかも知れません。

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