Audibleに代表される「オーディオブック」で本を「聴いている」と、ときどき、朗読者の読み間違えに気づきます。その本が扱うテーマに特有の用語や人名について、読み方やアクセントに誤りがあることが少なくないのです。
しかし、オーディオブックの場合、朗読者が間違えても、間違えた箇所のみをふたたび録音するわけには行かないはずです。少なくともその段落全体の録音、場合によっては、節や章の全体を新しく録音し、古いものと入れ替えることが必要となります。
映像の場合、修正はさらに大変な作業となります。
私は、授業のための動画を毎週撮影しています。これらの動画はすべて、「一発撮り」「編集なし」です。撮影したあと、動画を通して再生しながら内容を確認し、問題がなければ、大学のサーバーにそのままアップロードして作業を終えます。
動画の撮影中には、もちろん、言い間違いがあります。しかし、間違いの訂正はすべて、動画の中で済ませることにしています。(「あっ、さきほど○○と言いましたが、あれは間違いで、正しくは××です、今気づきました」というような感じです。リアルな授業なら、教師は誰でも、間違いをこのように訂正しますから、授業用の動画をこのような形で修正することには何ら問題はありません。)
しかし、映像のタイプと間違いの種類によるかも知れませんが、また、単純な言い間違えを音声のみによって修正するのなら話は違いますが、撮影された映像のある場面に間違いが見つかり、この同じ場面をゼロから撮りなおす場合、映るすべてのものをふたたび集めなければなりません。これは途方もない手間となるはずです。
これに対し、文字のみによる文書の修正は、映像や音声とは比較になりません。修正の最小単位は文字だからであり、音声や映像とは異なり、それ自体がバイナリーだからです。もちろん、入力された文字は、そのまま、人間に読むことが可能です。(映像や音声は、データとしてはバイナリーですが、バイナリーとして入力されるわけではありません。バイナリーのデータを人間が見ても、何もわかりません。)(後篇に続く)