男性の目に「女性に固有」のもの、つまり特殊女性的と映る行動は少なくありません。このような行動の中には、1日に何回も反復されるようなものの他に、特定の状況のもとで惹き起こされるものもあります。
「男性なら同じことはしない」と感じる不思議な行動の1つに、「紙袋の再利用」というものがあります。それなりに高額の菓子、化粧品、洋服などを店頭で購入すると、商品を紙の袋に入れて渡されることが少なくありません。このようなとき、男性の多くは、購入した商品を取り出したあとの紙袋を再利用しないはずです。すぐに廃棄してしまうことはないとしても、少なくとも、それ自体を「紙製のバッグ」として外には持ち出しません1 。
ところが、街で観察するとすぐにわかるように、店名やブランドのロゴが印刷された紙袋に、そのブランドや店舗とは何の関係もないものを入れて「紙製のバッグ」として利用する女性は少なくありません。ショッピングバッグをバッグとして再利用するのは、私の知るかぎり、90%以上が女性です。バッグとして再利用された紙袋を提げている男性を街でまったく見ないわけではありませんが、私の想像では、その紙袋はほぼすべて、「配偶者から持たされたもの」であるに違いありません。
私が「紙製のショッピングバッグの再利用」を不思議に思うのは、これがまったく美的ではないからです。そもそも、紙袋には耐久性がありません。たとえば、お洒落なことで知られるティファニーの手提げ袋でも、繰り返し使ううちに汚れてきたり、折り目の山の部分が毛羽立ったりすることを避けられないでしょう。
ティファニーの紙袋を見せびらかすことで、自分がティファニーで何かを買ったか、あるいは、ティファニーの宝飾品を誰かからプレゼントされたことを無言のうちに示すという効果がないことはないかも知れません2 。しかし、紙の袋を再利用する——中身は単なるプラスチック製の弁当箱かも知れません——ことによって生まれる貧しげな感じ、および、ティファニーの紙袋を見せびらかす行動にもとづいて推測される本人の好ましくない性格の方が見る者に強い印象を与えるはずです。
女性は男性に好ましい印象を与えることを目的として持ち物を決めているわけではありませんし、また、女性が男性に気に入られるよう装うべきであると私自身は考えませんが、ただ、「紙袋の再利用」だけは慎重になるのが無難であるような気がしています。
- 少なくとも私は、このような紙袋は、処分する予定の不要な書類をまとめる袋として活用することはあっても「バッグ」として使うことはありません。 [↩]
- もっとも、ティファニーについては、紙袋や空箱のみ通販で入手することができます。(ティファニー自身が販売しているのではありません。) [↩]