新型コロナウィルス感染症の流行が始まってから、私は、飛行機に乗るのを控えていました。というよりも、そもそも、遠くに出かける用事をできるかぎり作らないようにしてきました。しかし、今年の後半、感染者数が大幅に減り始めてから、ようやく、公共の交通機関を使って泊まりがけで旅に出ることに対し抵抗を覚えなくなり、飛行機にも3年ぶりに乗りました。
ところで、わが国にはいくつもの航空会社があります。その数は毎年のように増えており、2022年10月現在——私の数え方に間違いがなければ——25社もあるようです。しかし、残念ながら、飛行機であちこちに出かける機会が多いわけではない私は、国内線に関するかぎり、ANAとJAL以外の飛行機に乗ったことがありません。しかも、私がこれまでの人生で乗った飛行機の9割以上はANAです。飛行機に乗ってどこかに行くとき、ANAを選択することができるときには、私は必ずANAを選択します。
世の中には、JALのファンが多いのに対し、ANAのファンは必ずしも多くはないという印象を私は持っています。実際、飛行機に乗る機会の多い複数の知り合いからANAの悪口を聞かされたことが何回かありますが、JALの悪口というものを直に耳にしたことはありません。
しかし、残念ながら、私は、JALをあまり好みません。1982(昭和57)年の羽田沖の事故と1985(昭和60)年の墜落事故の記憶が強烈——死者数が歴史上もっとも多い航空機事故——だったせいか、JALの飛行機に乗るたびに、落ちる恐怖に襲われます。(実際には、墜落の確率の点で、ANAとJALに違いはありません。)したがって、これもまた他に選択肢があるかぎりにおいて、JALには乗らないことにしています。
このような選択の結果として、私は、国内線に関するかぎり、路線に関係なくANA以外には原則として乗らなくなりました。乗った回数のみを手がかりとするなら、私は、ANAのファンではなく、むしろ、「信者」に近いかも知れません。