Home 世間話 航空会社の好みについて(その2)

航空会社の好みについて(その2)

by 清水真木

 もちろん、JALの飛行機に乗るたびに落ちる恐怖に襲われるのは、そして、JALを積極的には選ばない理由は、墜落事故の印象だけではありません。

 JALに乗るたびに私が特に懸念を覚えるのは、乗客への応対全般が、基本的に「飛行機という特殊な装置の内部にいることを乗客にできるかぎり感じさせないようにする」ことを目指しているように思われることです。たしかに、乗客に対する普通の意味での「気配り」は、大変に行き届いているに違いありません。おそらく、この点ではANAよりもすぐれているでしょう。

 しかし、誰が考えても明らかなように、飛行機というのは、電車やバスとは異なる特殊な乗り物であり、飛行機による移動がどれほどカジュアルになるとしても、飛行機の乗客には「してはいけないこと」「注意すべきこと」がたくさんあります。(だから、離陸前に乗客全員が安全に関する動画を見せられるわけです。他の公共の交通機関では、このようなことは決してありません。)

 この点に関し、私がANAを積極的に評価します。なぜなら、ANAは、機内にいる時間が(悪い意味において)特別ではないと乗客に錯覚させる工夫に関し熱心ではないように見えるからです。(ただ錯覚させることに失敗しているだけかも知れませんが。)反対に、私が知る範囲では、ANAは、安全を損ねる可能性が少しでもある乗客の行動の取り締まりについては、全体としてJALよりも厳格です。少なくとも、私は、このように感じています。実際——これもまた私が観察したかぎりでは——飛行機の乗客となることに慣れていない旅行者が「シートベルトを締める」「離着陸のときには座席の背を立てる」などの基本的な動作を怠ったとき、JALの客室乗務員は、これを見過ごしたり見逃したりすることがありますが、ANAでは、子どもも老人も関係なく全員が安全に関するルールを厳格に守らせられます。これが、私がANAを好む最大の理由です。

 飛行機が完全にカジュアルな乗り物になるまで、航空会社に関する私の好みは変わりそうもありません。

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