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飲食店と客の関係の正常化について

by 清水真木

 新型コロナウィルス感染症の流行が始まった2020年の春以降、政府や地方公共団体は、飲食店、特に酒類を提供する可能性のある飲食店に対し、営業時間の短縮や休業を繰り返し要請してきました。複数の客がマスクを外した状態で近距離で対面しながらアルコールを摂取するような状況のもとでは、クラスター感染の危険が高くなると見なされたからです。

 もちろん、この2年間に発生した大規模なクラスター感染のうち、飲食店に由来するものはごく少数にとどまります。「飲食店で酒を飲ませるとクラスター感染が発生する」という予測が間違いであったからなのか、それとも、多くの飲食店が政府や地方公共団体の休業や時間短縮に応じてきたからであるのか、素人の私には判断することができません。

 しかし、現在は、感染者数がこれまでにないほど増えているにもかかわらず、営業時間の短縮や休業の要請は行われていません。これは、飲食店と客の両方にとり、大変に好ましいことであると私は考えています。

 以前から、私は、政府や地方公共団体が新型コロナウィルス感染症への対策として営業時間の短縮や休業を飲食店に求めるのは間違いであると考えてきました。なぜなら、感染防止の責任は、飲食店ではなく客の方が負うべきものだからであり、飲食店を利用したことが原因で新型コロナウィルスに感染する客がいるとするなら、それは、明らかに客の行動が責められるべきだからです。この点は、次の文章で書いたとおりです。

 流行が拡大しているのなら、危険を予期して外出を控えるのが常識的な行動であるはずです。世の中には、常識的に判断し行動する能力を欠いた酔っ払いが多いのかも知れませんが、だからと言って、政府や地方公共団体が先回りして飲食店の扉を閉ざすというのは、客との関係ではパターナリズムであり、飲食店にとっては、不当な業務妨害以外の何ものでもないように思われるのです。

 現在は、飲食店に対する何の要請もありませんから、当然、税金を原資とする補償金や協力金が支払われることもありません。感染者数が増えることで客足が遠のき、その分、飲食店の利益は減るかも知れませんが、これは、1人ひとりの客の合理的な行動の結果であり、誰の責任でもありません。

 飲食店自身の努力が利益に反映されるようになり、この意味において、飲食店と客の関係がようやく正常化したと考えることができます。私は、現在の状況を肯定的に評価します。

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