私は夜に外食することは滅多にありません。これはつまり、他人と一緒に夕食をとることが滅多にないことを意味します。ただし、それほど親しくない相手をもてなすため、私の方で夕食の席を用意することは稀にあります。
そのようなとき、先方に対して、食べられないものがあるかどうかを事前に確認するのとあわせて、酒を飲むかどうか、飲むとしたらどのくらい飲むかを尋ねることにしています。
しかし、この問い合わせに対する回答の中には、困惑させられるものが少なくありません。もっとも厄介なのは、「たしなむ程度」という紋切型です。*1
誰でも知っているように、「たしなむ程度」というのは、「ほどほどに飲む」「飲み過ぎない」「まったく飲まないわけではない」という意味です。これは、酒を飲む人間にとっては、ことによると有意味な情報なのかも知れません。
しかし、酒を「一切たしなまない」私からすると、この「たしなむ程度」というのはナンセンスであり、何も言っていないのとほぼ同じ空虚な回答です。というのも、飲まない人間が誰かをもてなす場合に事前に知りたいのは、その相手が「できれば酒があった方がよいと思っているのか、それとも、酒がなくても一向に痛痒を感じないのか」という1点に尽きるからです。だから、私のように飲めない人間から飲酒に関する問い合わせがあったら、回答は、「酒はない方がよい」か「酒がある方がよい」かのいずれかにするのがよいと思います。(「酒はなくてもよい」では、「たしなむ程度」と同じになってしまいます。)
私自身は酒を飲みませんから、放っておけば、私は、基本的にアルコールを一切提供しない店を選びます。あるいは、最初から酒を必要としないタイプの接待しかしません。しかし、もてなす相手が「酒を少しは飲みたい」「酒が食卓にあってこそ本来のもてなしである」と考えているのであれば、やはり、これに合わせ、酒を飲むことに違和感のないような飲食店を探すことになるでしょう。
とはいえ、「お酒大好き」「酒なら何でも、いくらでも歓迎」とまで言われたら、さすがにそれはそれで頭を抱えるかも知れませんが。(どのように接待すればよいのかわからないからです。)
*1:自分を「かわいく見せる」ことを目的として、本当は「うわばみ」であるにもかかわらず、「たしなむ程度」と過少申告する女性がいるようです。(「飲まない」と回答すると虚偽申告になるからかも知れません。)しかし、残念ながら、「たしなむ程度」などという思わせぶりな紋切型を使うことは、それだけで「かわいさ」をいちじるしく損なうように思われます。