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大学入試の会場での忘れられない光景

by 清水真木

 今から20年以上前、地方の国立大学で初めて入試の監督――1999年1月に実施された大学入試センター試験でした――というものに携わったとき、ある光景に驚きました。私が驚いたのは、受験者の大半が高校の制服を身につけて会場に来ていたことです。

 今から30年以上前、私が大学を受験したときにも、制服着用で会場に現れる受験生がまったくいなかったわけではありません。しかし、その割合は、せいぜい20人に1人くらいであり、私は、制服を着た受験生を見かけても、「何か特殊なポリシーにもとづいてわざわざ制服を着ているのであろう」くらいにしか考えていませんでした。

 ところが、私が大学の教師として初めて監督した試験会場では、受験者の大半が制服を着用していました。しかも、そのうちのある部分は、教員が引率してきたのか、貸し切りバスに乗って集団で受験に来ていました。これは、少なくとも私にとっては気持ちの悪い光景であり、この光景は、今でもよく憶えています。

 受験者の大半が試験会場において制服を着ているというのは、この年だけの特殊な現象ではなく、その後、現在の大学に移る直前の2008年3月の入試まで、私が関係したすべての形態の入試において、受験者の大半は制服姿でした。

 しかしながら、これは、ことによると特定の地方にのみ認められる「風習」のようなものなのかも知れません。というのも、現在の本務校では、入試の形態に関係なく――付属高校を対象とする入試を除き――試験場に制服姿で現れる受験生は、やはり圧倒的な少数派であり、この点において、私が受験した30年以上前と異なる点は認められないからです。

 なぜわざわざ高校の制服を身につけて大学の入試を受けるのでしょうか。大学入試に制服姿で臨むことを求めるような校則があったり、制服の着用を高等学校が指導していたりするのでしょうか。私にはまったく見当がつきません。また、たとえ制服の着用が校則によるものでもなく指導によるものでもないとしても、同じ会場で受験する同じ高等学校の生徒の多くが制服姿であるとき、ひとりだけ私服で受験するのには相当な勇気が必要でしょう。東京ならばともかく、地方において、このような同調圧力を撥ね返したり無視したりするのは決して容易ではないに違いありません。

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