夏になってから、新型コロナウィルス感染症の流行が拡大しているようです。「夏に感染者が増える」というのは、それ自体としては去年も観察された現象であり、特に驚くには当たらないように思われます。もちろん、感染の規模はまったく異なりますが。
去年の感染者数の増減は、エアコンの使用と相関しているはずです。人口密度が高くないにもかかわらず、夏に沖縄、冬に北海道で感染者が増えたことが、両者の関係を雄弁に物語っています。
とはいえ、上記のような仮説――すでに法則になっているのかも知れませんが――が妥当であるなら、東京の場合、今年は、秋に感染者数が一度減少し、その後、多くの人々が暖房を使うようになる11月後半から感染者がふたたび増え、暖房が使われなくなる3月半ばごろまで、(ワクチンのおかげで重症化は免れるとしても、)毎日何千人もの感染者が新たに生まれるはずです。
さらに、あくまでも個人的な心構えとして、私は次の点に注意を向けています。今から約100年前、いわゆる「スペインかぜ」のウィルスによる感染症がわが国で大流行しました。「スペインかぜ」の流行は3年間続きましたが、このとき、2年目の冬にウィルスが強毒性のものに変異して大量の死者が出たことが知られています。「スペインかぜ」の流行のパターンを新型コロナウィルス感染症の流行と単純に重ね合わせるなら、新型コロナウィルス感染症の流行がどれほど短く見積もっても2023年の春先までは終息しないこと、そして、2021年から22年の冬にかけて、強い感染力を持ち強い毒性がある変異株が流行して重症患者や死者が急激に増えることが予想可能です。つまり、今回のパンデミック全体において私たちが警戒し、社会全体として総力を挙げて新型コロナウィルスに向き合わなければならない本当の危機が訪れるのは、今年の冬、つまりこれからであることになります。小学校から高等学校までを休校とし、できるかぎりすべての仕事をリモートワークにするなどの強力な措置が本当に必要になるのは、むしろこれからであるように思われます。
とはいえ、これまでの政府の意思決定を眺めるかぎり、残念ながら、今年の冬のために何か意味のある対策が講じられることはなさそうです。結局、私たちひとりひとりができる範囲で自衛するしかないのかも知れません。