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狭小の建売住宅が増えると

by 清水真木

 

 私は、杉並区の中心あたりに住んでいます。

 杉並区のうち、南北の端は公共交通機関のアクセスという点に問題はありませんが、中心に近づくほど不便になり、私が暮らすあたりでは、最寄り駅まで徒歩で15分から20分かかります。私の暮らすエリアは陸の孤島であり、不便さという点では東京23区の中で最悪の部類に属するのではないかと思います。

東京のディープ・サウスについて

 とはいえ――いや、だからなのかも知れませんが――この20年ほどのあいだに、私が暮らすエリアでは、土地の細分化が大変な勢いで進みました。ここでの「細分化」とは、1軒の戸建て住宅が建っていた土地が分割され、複数の小さな戸建て住宅がそこに新たに建設されることです。

 土地の所有形態はまちまちですが、21世紀になってから現在まで、私の自宅を中心とする半径50メートルの範囲で6つの土地が複数に分割され、その結果、建物と世帯数は、この20年間に2倍になりました。たしかに、新たに移り住んでくる人々の多くは、子育て世代であり、このような世帯が増えることには、地域の高齢化の防止あるいは解消という点においてそれなりの意義があるのかも知れません。

 とはいえ、新たに建設されるのはいずれも、敷地面積が30坪程度の小さな建売住宅です。当然、「戸建て」とは言っても、建ぺい率と容積率が上限まで使われていますから、庭などないのが普通です。また、わが国の法律では、建物と隣地との境界のあいだに50センチ以上を空けることが定められていますが、現実には、土地があまりにも狭く、建物の外壁と境界のあいだに足を踏み入れることすらできない場合が少なくありません。

 そして、このような土地の細分化が進行した結果、街の緑は劇的に少なくなったように思われます。

 もともと、杉並区は、その名称に反してもともと緑地が少なく、人口1人当たりの公園面積は、2020年4月1日現在、23区中19番目です。以下のグラフは、東京都建設局の公園調書から抜粋して私が作成したものです。

東京23区人口1人当たりの公園面積(2020年4月1日現在)
 それでも、杉並区のエリアの多くが殺伐とした印象を免れてきたとするなら、それは、公園以外の場所、つまり個人の住宅、学校、宗教法人などに付属する庭に代表される民有地に緑が相対的に多いからでしょう。当然、このような緑は――非常に少額の補助が杉並区から出る場合があるとはいえ――基本的には個人の費用と努力によって維持、管理されているものです。
 土地の細分化と狭小の建売住宅の増殖は、ただでさえ少ない杉並区の緑をさらに少なくし、杉並区の風景を殺伐としたものにすることに貢献するに違いありません。
 

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