Home 世間話 「自分の味に飽きる」という経験について

「自分の味に飽きる」という経験について

by 清水真木

 2020年に新型コロナウィルス感染症の流行が始まってから、私は、ほとんどまったく外食しなくなりました。パンデミック以前から滅多に外食してきませんでしたが、この1年半のあいだに、その頻度はさらに落ちました。

 昨年度は、所属する学部の教務主任をつとめていたため、授業期間中は毎週1回、支給された弁当を学内の教室や会議室で食べていましたが、今年の4月以降は、これもなくなり、外食と完全に縁が切れてしまいました。

 今年の4月上旬、私は、3泊4日で金沢を旅行しました。2回目の緊急事態宣言が解除されてから3回目の緊急事態宣言が出るまでのあいだのことです。このとき、私は、金沢市内の飲食店で何回か食事しましたが、食事のために飲食店に入ったのは、このときが最後です。これ以降半年以上のあいだ、外食は一度もしていません。

 外食しなければ、当然、食事は基本的にすべて自宅で済ませることになります。冷凍食品やレトルトに代表される既製品の助けを借りることがないわけではありませんが、栄養のバランスを維持するため、パンデミック以前から、基本的に自分で料理するよう心がけてきました。このかぎりにおいて、私の食生活には、新型コロナウィルス感染症の流行の影響はないと言うことができます。

 とはいえ、自炊の生活は、「自分の味に飽きる」危険につねにさらされれています。これは、ひとり暮らしで自炊をこれだけ長期間続けている人なら誰もが経験することではないかと思います。私の場合、何ヶ月かに1回、自分の味に飽きてしまいます。

 素材や味付けのパターンが固定しないよう心がけていても、どうしても、料理にある偏りが生まれます。たしかに、スーパーマーケットの店頭に並んでいても、何らかの理由によって手に取らない野菜や調味料は少なくありません。

 自分の味に飽きると、「食べたいのに食べたくない」という矛盾した状態に陥ります。そして、このような状態にひとたび陥ると、自力で抜け出すことは容易ではありません。

 私の自宅のすぐ近くに小さなスーパーマーケットがあり、私は、普段はここで買い物しています。しかし、「自分の味」に飽きたときには、ここで買い物する代わりに、自宅から歩いて20分くらいのところにある別の大きなスーパーマーケットを訪れ、目についたものをとりあえず買って食べてることがあります。(電車を乗り継いでさらに遠くのスーパーマーケットに買い出しに行くこともあります。)普段は見かけない食品や素材を眺めることにより、「自分の味」に揺さぶりをかけることができるかも知れないと期待しています。

 体調がそれなりに維持されているところを見ると、これまでのところ、この試みは上手く行っていると考えてよさそうです。ただ、残念ながら、買い込んだ食品が口に合わず、相当なロスが生まれてしまうことがあります。

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