私の自宅は、杉並区の中心付近、環状八号線から少し奥に入ったところにあります。
私の自宅付近を通る環状八号線——荻窪街道と分岐してから再合流するまでの区間——は、住宅街の土地を収用することで道路を新たに造成した区間です。そのせいで、現在でも、環状八号線に沿って不思議な形状の土地があちこちに残っています。
そして、このような事情により、1970年代半ばに開通してからも、比較的最近まで、環状八号線に面した土地に古い木造の戸建ての住宅がたくさん残っていました。
ところが、21世紀になってから、環状八号線沿いに何かを新規に建てる場合、耐火構造の高層の建築物としなければならなことが条例にもとづいて決められたようです。幹線道路から発生する騒音を防ぐとともに、災害が発生したときに火災の延焼を防ぐための措置であると考えられます。
1997年に「井荻トンネル」が完成し、関越自動車道と中央自動車道をつなぐバイパスとして環状八号線が利用されるようになり、その結果、交通量が急に増えたこともまた、このような措置の背景であったのかも知れません。
現在では、環状八号線に沿って鉄筋コンクリート造の高層マンションの壁が生まれつつあります。たしかに、環状八号線から聞こえてくる騒音は、以前ほどは気にならなくなりました。
ただ、環状八号線に沿ってそびえる壁の背後には、相変わらず、普通の住宅地が広がっています。というのも、このエリアの大半は、今も昔も、都市計画法にもとづく用途地域としては「第一種低層住居専用地域」または「第二種低層住居専用地域」に当たるからです。つまり、環状八号線を挟むようにそびえる2つの壁の背後には、高層の建築物を建てられないエリアが広がっているのです。
杉並区が提供する電子地図サービスの「すぎナビ」を用いて都市計画の概要を調べたところ、私の自宅がある地点は、次のとおりでした。
用途地域
第1種低層住居専用地域
■建ぺい率:50%、容積率:100%
■日影規制値種別:(一)
・5mを超える範囲:3時間以上
・10mを超える範囲:2時間以上
・測定水平面:1.5m
■敷地面積の最低限度:70㎡
■最高高さ限度:10防火及び準防火地域
準防火地域高度地区
第一種高度地区
これに対し、自宅から歩いてすぐの環状八号線の両側の細長いエリアのみ、その用途地域が異なっています。
用途地域
準住居地域
■建ぺい率:60%、容積率:300%
■日影規制値種別:(二)
・5mを超える範囲:5時間以上
・10mを超える範囲:3時間以上
・測定水平面:4m
■敷地面積の最低限度:60㎡
■最高高さ限度:指定なし防火及び準防火地域
防火地域高度地区
第三種高度地区最低限度高度地区
7m以上沿道地区計画
杉並区環状八号線沿道地区計画
(後篇に続く)