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「手ぶら」について

by 清水真木

私は、外出するときの荷物は少なければ少ないほどよいと考えています。また、できるかぎり何も持たないよう普段から心がけています。私の理想は「手ぶら」です。

たとえば、旅に出ると、何かを購う機会が少なくありません。しかし、私は、足がはやい食品、あるいは、よほど小さなものを除き、原則としてすべてを自宅に直に送ってもらうことにしています。身軽に移動するためです。

それどころか、国内のひとり旅であり、かつ、宿泊先が1箇所なら、移動中に必要となる最低限のものを除き、大抵の場合、出発の数日前に、すべての荷物を宿泊先に送ってしまいます。

数年前、沖縄に旅行したときには、滞在中に必要となる荷物をすべて大きなスーツケースに詰めて出発の5日前に宅急便で送り出し、チェックインのときにこれをホテルで受け取りました。自宅を出るときに携えていた荷物は、小さなショルダーバッグ1つ分です。

また、旅行したのが2月下旬だったため、出発のときには防寒用の分厚いダウンコートを着ていました。しかし、このコートは、羽田空港に着いたあと、手荷物一時預かり所に預け、沖縄には持って行きませんでした。当日の朝の東京の気温は5度、那覇の気温は25度だったからです。

当然、沖縄から東京に戻るときもまた、移動中と帰宅当日に使うものを除き、すべてをスーツケースに詰め、チェックアウトの前にホテルから自宅に宅急便で送りました。

数日旅行して帰宅すると、翌日から、大小さまざまな荷物が自宅に届き始めます。ときには、自宅に届けられて初めて購入したことを思い出すようなものもあります。何もかも自宅に送ってもらうと、ブツが視界から一旦消えるため、購入した事実そのものを忘れてしまうのです。

もちろん、旅行中に限らず、荷物はつねに少なければ少ないほど好ましいと考えています。街を歩いていると、荷物で膨らんだバックパックを背負って歩くサラリーマンをよく見かけます。荷物が多いことにはそれなりの事情があるのでしょうが、残念ながら、私には到底真似することができません。私には、「大荷物」に対する耐性がないのかも知れません。

今はまだ、私は、大学に行くときには書類カバンを携えています。そして、カバンの中には、携帯電話や財布など、一日中持ち歩いていてもカバンから一度も取り出さないことの方が多いものが残っています。これらの所持品には、何か予想外のことが発生したときの保険の意味があるからです。(同じ理由により、降水確率が30パーセントを超える日には折り畳み傘をカバンに入れます。)

それでも、将来は、持ち物を本当に必要最低限のものに制限し、「手ぶら」にかぎりなく近い状態を実現したいと考えています。

街を歩く人々の荷物が長期的に増える傾向にあるのか、それとも、減る傾向にあるのか、私にはわかりません。ただ、この数十年間、「デジタル化」「小型化」「軽量化」などが急速に進行したにもかかわらず、荷物の嵩は、全体としては、その恩恵をあまり受けていないように見えます。仕事が効率化されても労働時間が減らないのと同じように、荷物がどれほどコンパクトになっても、その嵩全体が自然に減ることはないのかも知れません。

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