Home 言葉の問題 カギ括弧の濫用について(前篇)

カギ括弧の濫用について(前篇)

by 清水真木

 数年前まで、週刊誌の中吊り広告——通路の上に吊されている広告——を電車でよく見かけました。「週刊新潮」と「週刊文春」は、日本を——よくも悪くも——代表する週刊誌であり、また、いずれも毎週木曜日に発売されます。そのため、週の前半に混雑した電車に乗り、着席することができないときには、週刊誌の中吊り広告を眺めて目次を一通り確認していました。

 かつては、電車に乗ると、「週刊新潮」と「週刊文春」だけではなく、主な週刊誌についてはすべて、中吊り広告を見ることができました。しかし、時代とともに広告が少しずつ減り、今では、中吊り広告を定期的に出稿している週刊誌はないはずです。私が知るかぎり、その理由は驚くほど単純です。すなわち、想定される購読者層が高齢化し、通勤のために電車に乗らなくなったのです。私自身が週刊誌を手にとるようになったのは、大学入学後、1980年代の終わりごろです。しかし、このころにはすでに、週刊誌の主な読者は50代以上の男性でした。漫画以外の週刊誌を購読している人は、私の世代ではごく少数にとどまるはずです。(私の場合、現在は、定期購読している週刊誌が1誌あるだけです。)

 その後、週刊誌は、若い世代の読者を獲得することができず、従来の読者がそのまま高齢化して行ったようです。以前から、週刊誌には怪しい精力剤の広告が多いことには気づいていましたが、1990年代の途中から、中心となる購読者の関心に応えるためなのか、健康情報や病院に関する記事が目立つようになりました。最近は、誌面の作り方が全体として「老人向け」になっているような気がします。(後篇に続く)

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