Home 世間話 いわゆる「愛犬家」について(前篇)

いわゆる「愛犬家」について(前篇)

by 清水真木

 私の自宅から歩いて15分くらいのところに、「東京都立善福寺川緑地」という名の公園があります。これは、善福寺川に沿って作られたいくつかの公園の1つであり、東京都が公表している資料によれば、その広さは善福寺川の両岸を合わせて180,889.42平方メートル(「東京ドーム」を面積の単位とするなら約「4個」分)になります。

 私は、小学生のころからこの公園を数え切れないほど訪れています。最近は、整備が行き届いていないせいか、以前とくらべてやや荒れていますが、それでも、自動車を気にすることなく歩くことができる貴重な空間であることに変わりはありません。

 ただ、私は、この公園に行くときには、時間を選ぶようにしています。特に、晴れた日の夕方には、よほどの事情がないかぎりこの善福寺川緑地には近づかないようにしています。犬の散歩の時間帯にこの公園を歩くと、係留されていない犬に遭遇することがあるからです。

 そもそも、犬の飼い主には、犬の「係留義務」が課せられています。この義務は、直接には各都道府県の条例によって定められています。(この義務を定める条例は、すべての都道府県にあります。)東京都の場合、「動物の保護及び管理に関する条例」第9条第1項にこの義務が明記されています。

 一 犬を逸走させないため、犬をさく、おりその他の囲いの中で飼養し、又は人の生命若しくは身体に危害を加えるおそれのない場所において、固定した物に綱若しくは鎖で碓実につないで飼養すること。ただし、次のイからニまでのいずれかに該当する場合は、この限りでない。

 イ 警察犬、盲導犬等をその目的のために使用する場合

 ロ 犬を制御できる者が、人の生命、身体及び財産に対する侵害のおそれのない場所並びに方法で犬を訓練する場合

 ハ 犬を制御できる者が、犬を綱、鎖等で確実に保持して、移動させ、又は運動させる場合

 ニ その他逸走又は人の生命、身体及び財産に対する侵害のおそれのない場合で、規則で定めるとき。

 他人と接触する可能性が少しでもある場所で犬を移動あるいは運動させるときは、上記の「ロ」にもとづいて犬を係留しなければなりません。しかし、この点は、犬を実際に飼っているかどうかには関係なく、また、条例を知っているかどうかに関係なく、誰にとっても常識であるはずです。

 ところが、現実には——数としては決して多くはないとしても——この点を無視したり勘違いしたりしている「愛犬家」がいるのか、犬を係留しないまま公園へと連れ出して自由に走らせているのをときどき見かけます。

 私は、これまでの人生において、係留されない状態で公道を歩いている犬に吠えられたり、飛びかかられたりしたことが何回かあります。(私は、理由は不明ですが、「犬界」(?)では大変に不人気で、散歩中の犬に吠えられるばかりではなく、犬のいる家の前を通っただけで、家の中から吠えられることすらあります。)そして、これもまた今までに何回か、犬を係留せずに連れていた飼い主に対し犬を係留するよう求めたことがあります。(もちろん、私に危害が及びそうになったときだけです。)

 しかし、私の方が「犬をつないでいただけますか」とそれなりに礼儀正しくお願いしているにもかかわらず、飼い主がこの要求を受け容れたことは一度もありません。

 反対に——完全に無視されることがありますが、これはまだよい方であり——大抵の場合、意味不明の罵詈雑言がほぼ瞬時に嵐のようにふりかかってきます。(後篇に続く)

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