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ミニマリズム(への道)としての自己への還帰について(後篇)

by 清水真木

※この文章は、「ミニマリズム(への道)としての自己への還帰について(前篇)」の続きです。

 そして、自分自身の生き方に態度をとることは、生活の信条としてのミニマリズムをその本来の姿において現実のものとするために避けて通ることができない第一歩となります。ミニマリズムというのは、自分の生活空間を埋めているモノを消去することのみによって実現するわけではありませんが、それでも、モノが少ない空間の内部における生活がミニマリストの最大の特徴であることは確かです。

 そして、自分の周囲にあるモノを適切に消去することが可能となるためには、これらのモノとの交渉*1において成立してきた生活を改造することが必要だからであり、生活の改造についてその方向を定めるためには、「いかに生きるべきか」を真剣に問わないわけには行かないからです。

 自分自身のあり方に注意を向けること、つまり、自己へと還帰することは、しかし、ミニマリズムへの準備にとどまるものではありません。自己への還帰は、私が所有するもの、私の過去、私のものの見方など、すべてのものに対し、本当に私のものであるかどうか吟味することによって成し遂げられるものであり、この意味において、これは、それ自体としてミニマリズムの実践であると言うことができます。

 生活空間の整理整頓を「物理的なミニマリズム」と名づけるなら、この物理的なミニマリズムにより本当の意味におけるミニマムが実現されるためには、これに先立ち、みずからのものの見方を整理する「実存的なミニマリズム」を避けてとおることができないように思われるのです。

*1:部屋にただ置かれているだけのモノとのあいだにも交渉はあります。

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