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※この文章は、「日本のコロナ対策は失敗したのか(その1)」の続きです。
「日本のコロナ対策は全体としては成功した」というのは、これまでの各段階における対策の大枠が、それぞれの時点においてわが国が知りえた他国の成功と失敗の先例を学習した上で決められたこと、つまり「後進国の優位」が活かされたことを意味します1 。
実際、世界には、他国の対策の状況から何も学習しなかった国はたくさんあります。新型コロナウィルス感染症の流行の中で、何の対策も講じられないままただ感染が拡大したり、市民による暴動が発生したり、反対に、政府が暴力を用いて国民を威嚇したりするような嘆かわしい状況が各地で生まれました。しかし、幸いなことに、わが国は、主に経済的にひどい損害を被ってはいるものの、世界の多くの国々とは異なり——これもまた「全体としては」ですが——既存の社会の枠組が揺らぐほどの深刻なダメージを免れています。この意味において、日本のコロナ対策は成功していると言えないことはありません*2。
日本に固有の事情により、対策が実行に移されなかったり、効果が挙がらなかった場面は少なくないはずですが、このような場面があることをもってコロナ対策全体が「失敗」であると決めつけるのは見当外れであるように思われるのです。
- もちろん、先行事例を学習してみずからの方向を決めるという日本の伝統的な姿勢に何の問題がないわけではありません。すなわち、このような姿勢をとり続けるかぎり、みずからが最初に動くことはなく、他が動き始めるまで待つことを余儀なくされるからであり、これは、ある意味において、みずからの動き方を他の国に支配されるのと同じだからです。この点については、次の本に詳しい説明があります。
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