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しばらく前、人間以外の動物に言語があるかどうかという問題に関し、次のような文章を書きました。
上の文章では、言語を持つとは「メッセージを単語に分節し、かつ、単語を組み合わせて完全に新しい文を作り出す能力を持つこと」であると言いました。
しかし、その後、動物に言語があるかどうかを判定するためのさらに簡便な方法があることに気づきました。すなわち、動物——上の文章ではシジュウカラ——の言語として収集されたメッセージが言語を形作っているのなら、そこには必ず「否定文」が含まれているはずです。念のために言っておくなら、言語の標識となる否定文には、対応する肯定形がなければなりません。
「昨日はビールを飲んだ/飲まなかった」のように、ある文に否定的な表現を加えることにより、これを否定文にあらためる、あるいは、否定文から否定的な表現を消去することで肯定文を作ることができるというのは、メッセージの束が言語と見なされるための最低限の条件の1つであるに違いありません。
ある文Aとその否定形(-A)がシジュウカラのあいだで使われており、かつ、両者の違いが否定表現の有無だけであるなら、シジュウカラには言語があることを主張する十分な根拠となるでしょう。