Home 言葉の問題 Markdown雑感(素人の素人による素人のための・・・・・・)(後篇)

Markdown雑感(素人の素人による素人のための・・・・・・)(後篇)

by 清水真木

※この文章は、「Markdown雑感(素人の素人による素人のための・・・・・・)(前篇)」の続きです。

 ところが、残念なことに、Markdownに対応していないアプリもいまだに少なくありません。そして、2022年11月現在、その代表は、Microsoft Wordです。Markdown記法を含むプレインテキストをWordの編集画面にペーストしても、記号は変換されず、そのまま文字面に残ります。もちろん、Markdown記法を直に入力しても、Wordは一切反応しません。

 Markdownを読み込む機能がWordにない理由は私にはわかりません。WordがMarkdownに対応しないかぎり、ある程度以上の長さの文章——たとえば学術論文——をテキストファイルで執筆し、これをWord上で整形する場合、Markdown記法で用いられた記号をすべて削除しながら、同時に、同じ箇所に対しWord独自の書式を設定し直す作業が必要となります。そして、これは、相当に手間のかかる作業となります。私が知るかぎり、この手間を省略するためには、Markdown記法を含むテキストファイルを丸ごとWordファイルに変換して出力する機能を具えたテキストエディタ(たとえばUlysses)を使う他はないようです。

 現在のところ、ある程度以上フォーマルな文書の提出を求められる場合、その形式は、Word文書(.docや.docx) に限定されるのが普通です。したがって、自分が作る文書のほぼすべてがWord文書を最終形態とする場合、このような人にとっては、Markdownは必ずしも便利ではないかも知れません。

 ただ、Markdownが考案された趣旨と記法の特徴を考慮するなら、これは、文書の書式として、フォーマル(Word文書)とカジュアル(html)の中間に位置を与えられるのが適当なものであるように私には思われます。

 たしかに、世の中には、たとえば結婚式の案内状や「おみくじ」のように、紙に印刷された状態が最終形態となる文書が流通しています。豊かな伝統を背景とする複雑な書式の設定をつねに必要とする出版物もあります。これを代表するのが「書籍」です。しかし、これらは今は措き、パソコンやスマホの画面上で読まれるのが普通であるようなものに範囲を限るなら、Markdownは、(リッチテキストやウェブページに変換されるかどうかには関係なく、)句点、読点、カギ括弧などと同じような位置を与えられ、書式を表す方式の標準として広く使われる資格を具えたものと見なすことができるに違いありません。

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