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動物には言語があるか(中篇)

by 清水真木

※この文章は、「動物には言語があるか(前篇)」の続きです。

”I” “have” “a” “pen”という4個の単語を用いて作られる文はわずか1個です。

しかし、これに”you”が加わると、合計5個の単語から2つの文を作ることができます。

さらに、”book”を加え、6個の単語を使うことができるようになると、作ることができる文は4個になります。

そして、接続詞の”and”が加わり、使える単語が7つになると、作ることができる文の数は急激に増え、12個になります。

もう1つ、たとえば”computer”が使えるようになると、これら8つの単語を用いて少なくとも45通りの文を作ることが可能となります。

人間の場合、45通りの文を作るために知らなければならない単語の数はわずか8個。単語の数が1つ増えるたびに、表現することができる事柄の数は爆発的に増加して行きます。

これに対し、動物は、分節できない——つまり、文を単語へと分割することができない——ため、45種類の事柄を相手に伝えるためには、45通りのメッセージを丸ごと記憶しなければならないと考えられてきました。人間に具わる言語を操る能力というのは、記憶の有限な容量を効率的に使う能力と同じであると言うことができます。

前に引用した一節が事実であるなら、シジュウカラには、複雑なメッセージを単純なメッセージへと分節し、決まった順序で排列することまではできることになります。

ただ、前の引用のかぎりでは、シジュウカラにとり、言語の最小単位は「文」にとどまります。「言語を操る動物は人間以外にもいる」と言うことができるためには、メッセージを「単語」に分割する能力を持つ動物、つまり、それ自体としては真理値を持たない要素としての「単語」を持つ動物を見つけることが絶対に必要となるでしょう。しかし、1つのメッセージを単語のレベルまで分節することができる動物というのは——単語というものの人工的な性質*1を考慮するなら——見つからないと私は予想しています。

*1:メッセージを伝えるために必要な言語の最小の単位は「文」であり、単語は、何のメッセージも伝えません。この意味で、「単語」というのは、まったく人工的な単位であり、人間以外には獲得することが困難であるに違いありません。

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