昨日、次の記事を読みました。
私が勤務する学部では、もう10年近く前から、教職員が学生の氏名を呼ぶときに性別による呼称の使い分けを行わないことがルールとなっています。(大学全体のルールはまだないようです。)
具体的には、男子学生の氏名に「くん」、女子学生の氏名に「さん」をつけて呼ぶのをやめ、原則として全員の氏名に一律に「さん」または「くん」をつける、やむをえない場合は——呼称自体を省略して——呼び捨てで統一する、というのが現在のルールです。このルールは、在学している学生ばかりではなく、入学試験の受験者にも適用されています。
私自身、男子学生に「くん」を用いなくなってから何年も経ちます1 。また、男子学生に呼びかけるときに「さん」を使い始めるのに合わせ、「きみ」という代名詞も使わなくなりました。ただ、現在は、「きみ」の代わりに「あなた」を使うことにしていますが、男子学生と話すときに相手を「あなた」と呼ぶことには、今でもいくらか違和感を覚えます。
さらに、数年前からは、履修者名簿を始めとする各種のリストに学生の性別を区別するマーク(MとF)が記載されなくなりました。これは全学で一斉に講じられた措置です。
西洋近代各国語の場合、上の記事が紹介しているように、氏名をともなわない呼びかけにおいても性別にもとづく呼称の区別が必要となる場合があります。これに対し、日本語が使用される場面では——区別せずに済ませるための工夫がいくらでも可能であるという意味において——性別と呼称の関係は、ここまでセンシティブな問題ではないように思われます。(後篇に続く)
- 私は、このルールが作られる前に入学した男子学生にはルールを適用せず、「くん」を使い続けました。同じ学生に対する呼称を途中で変更するとコミュニケーションに支障があると判断したためです。しかし、私がルールを適用しないと決めた最後の学年の男子学生が6年前に卒業してからは、「くん」は一度も使っていません。 [↩]