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万年筆を修理する

by 清水真木

先週の土曜日、教授会に出席するために大学に行った帰りに、銀座に立ち寄りました。修理に出していた万年筆を受け取るためです。(感染者が増加しているにもかかわらず、土曜日の夕方の銀座は、相当な人出でした。)

私は、筆記用具には特別なこだわりはありません。ただ、筆圧が弱いせいか、ボールペンを好みません。したがって、自宅で文字を手書きするときには、鉛筆かシャープペンシル、あるいは、万年筆を使うのが普通です。

私は、特定のモノに対し、実用の範囲を超えて過剰なこだわりを持つ「通」ではありません。そもそも、大切なのは、「何で書くか」ではなく、「何を書くか」であると私はかたく信じています。したがって、万年筆を日常的に使っているとは言え、決して「万年筆マニア」ではありません。

万年筆が文字を書くための道具である以上、その評価の基準は、「文字を書く場面において自己主張しない」こと以外にはありえないでしょう。これまで,1000円くらいの万年筆に始まり、いろいろな万年筆を使ってきましたが、評価の基準はつねに同じです。

ところで、私が修理に出していたのは、ペリカンのM800という万年筆です。これは、ペリカンの万年筆を代表するモデルの1つのようですが、それ以上の詳しいことは知りません。(1000円の万年筆とくらべ、格段に書きやすいことくらいはわかります。)私はこの万年筆を20年近く前から使っています。2000年代までは、論文や本の原稿をこれで書いていました。

この万年筆は、以前、ペン先に近い軸の部分が縦に割れ、修理に出したことがあります。今回は、ペン先を紙に押しつけるたびに「カチッ」という小さな音が出るようになり、ペン先が曲がったのかも知れないと考えて修理に出しました。

万年筆を受け取るとき、「カチッ」という音の原因が何であるのか、詳しく説明してもらいましたが、その説明は、残念ながら、ペン先が曲がったからではないこと以外、私にはサッパリわかりませんでした。

なお、私には、インクに対する特別な好みもありません。使うインクの色は、原則としてブルーブラックと決めていますが*1、好きなメーカーがあるわけでもありません。最近ずっと使っているのは、シェーファーの瓶入りのインクです。しかし、これも、シェーファーが好きだからではなく、シェーファーのインク瓶の底には傾斜がつけられており、インクを吸引するのにこれが便利だからにすぎません。(現在、他のメーカーのインク瓶の底がどのようになっているのか、調べたことはありませんが、シェーファーのインクを使い始めたときには、少なくともペリカンのインク瓶の底は水平でした。)特別な色のインクを調合して使うなど、私には理解を超えています。

*1:西洋におけるインクの歴史を振り返るなら、インクの色の正統が「セピア」か「ブルーブラック」であることがわかります。

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