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「人文科学は何の役に立つのか」という問いについて

by 清水真木

「人文科学は何の役に立つのか」という問いは、それ自体がナンセンスだと私は考えています。なお、「人文科学」とは、「哲史文」(哲学、歴史、文学)のことです。

「人文科学は役に立つ」という主張は、「人文科学は何の役に立つのか」という問い以上にナンセンスです。(ナンセンスに比較級があるとしての話ですが。)

人文科学が役に立つことの根拠として「人文科学は世界の見方を一変させる」とか「人文科学は社会を批判的に眺める力を与える」とか、このようなことを強調する人がときどきいます。しかし、これは「役に立つ」という語の用法の不自然かつ強引な拡張であり、単なる「こじつけ」です。

そもそも、普通の意味で「役に立つ」と言えるのは、(道具であれ、情報であれ、人間であれ、)何らかの技術や手段として有効なもの、つまり、適切に使用されることによって到達しうる状態があらかじめ「誰に対しても」約束されているようなものだけです。そして、このことから、「役に立つ」とは、無際限の複製、模倣、共有が可能であることを必ず含むということがわかります。

だから、金融工学は「役に立つ」と言われ、インド哲学は「役に立たない」と言われるわけです。

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