Home 世間話 ウクライナの外務省が公開した動画について

ウクライナの外務省が公開した動画について

by 清水真木

 昨日、次の動画に関するニュースをネットで読みました。この動画で挙げられている国名の中に日本が含まれていないことを問題が受け止められているようです。

 しかし、私は、動画の右側を流れる国名の中にJapanの文字がないことには違和感を覚えません。むしろ、ここにわが国が含まれているとしたら、その事実を合理的に説明する方が難しく、この意味において、これを問題視する政治家の発言の方が見当違いであるように思われます。

 この動画が名前を(おそらく順不同で)挙げた国々は、基本的にヨーロッパあるいはその周辺に限定されています。ウクライナを支援している国々のうち、ここに名を挙げられていないところは他にもたくさんあります。世界全体では、ウクライナに対し完全に何の支援もしてこなかった国の方が珍しいでしょう。日本だけが無視されているのではないのです。(この動画で日本に言及するのなら、台湾や韓国の名を省略することも許されないでしょう。)

 空間的な意味でウクライナに近い国々は、わが国とは異なり、戦争の直接の影響を免れることができません。たとえばポーランドのようにウクライナと国境を接している場合には、大量の避難民を受け入れることでウクライナを支援しているでしょうし、モルドバやフィンランドやバルト三国のようにロシアと国境を接する国々は、ロシアからの侵略の脅威に直接にさらされたりしています。また、ドイツのように、経済に深刻なダメージを受けることを覚悟しながら、それでもエネルギー政策を180度転換することを決めた国もあります。

 もちろん、わが国もまた、ウクライナとさまざまな意味において利害を共有しています。この戦争でロシアを勝たせないことが、わが国の今後の安全保障にとりきわめて重要だからです。

 また、わが国は、ウクライナと利害を共有しているからこそ、積極的な支援を試みてきたわけです。

 しかし、動画で名を挙げられた国々の国民は、ウクライナにとっては、上記のような意味において戦争の2次的な被害者であり、利害を共有しているばかりではなく、運命すら共有している——あるいは、運命を共有していると思ってもらわないと困る——人々であるはずです。ウクライナを支援してきたすべての国の名を挙げることができないのなら、さしあたり、ウクライナにとって地政学的にゆかりの深い国々を優先的に記すという方針は、私には自然なもののように思われるのです。

 一部の政治家と評論家が動画に日本の名がないことを外交問題化することを目指しているようですが、このような反応は、日本の評判と品位を傷つけることにしかなりません。すぐにでも沈黙してもらいたいと私は考えています。

 在日ウクライナ大使館に次のようなツイートをさせてしまうことに、日本人の不見識をさらす以外の何の意味があるというのでしょう。私は、これをとても恥ずかしく感じます。

関連する投稿

コメントをお願いします。