数年前から、「筋肉は裏切らない」という文をネット上でときどき目にするようになりました。この文の由来は、NHKが2018年から放送し、現在も続く体操番組「みんなで筋肉体操」における出演者の発言のようです。
それでは、「筋肉は裏切らない」とはどのような意味であるのか。
昨日、次のような文章を書きました。以下は、これに関連する話です。
私の理解では、「筋肉は裏切らない」とは、適切な筋力トレーニングが筋力の増強や筋肥大に代表されるさまざまな結果を必ず惹き起こすことに他なりません。言い換えるなら、筋力トレーニングでは努力と効果のあいだに厳密な相関が認められるというのが、「筋肉は裏切らない」の意味です。「筋肉は裏切らない」とは、「適切な筋力トレーニングは、努力が必ず報われる活動である」を短縮した文であると言うことができます。
たしかに、筋肉は、私にのみ帰属する身体の一部であり、このかぎりにおいて、私のコントロールのもとにあります。少なくとも、他人の意のままになるものではありません。
ただ、筋肉が私の努力にふさわしく変化するとしても、このようにして変化した筋肉は、私の意のままになるものではありません。つまり、筋力や筋肉の大きさを維持するためには、筋肉に対しつねに物理的に働きかけること、つまりメインテナンスが必要となります。この意味において、筋肉は私自身ではなく、むしろ、私の外部にある何ものかであると考えるのが適当です。
もちろん、私の筋肉が悪意をもって私に反抗することがないのは事実です。人間関係のメインテナンスとくらべるなら、筋肉のメインテナンスでは、努力と結果の関係が明らかです。「筋肉は裏切らない」が「他人は裏切るが、筋肉は裏切らない」の後半部分に相当すると考えるなら、筋肉には、「裏切らない」という表現がふさわしいのかも知れません。
それでも、自慢することができるような筋肉を手に入れ、そして、これを維持するために必要なことは、私たちが「所有」する他のものを維持するのに必要なことと同じです。つまり、これに注意を向け、メインテナンスを続けなければならないのであり、私の意のままになるという意味では「裏切らない」ものではないのです。