しばらく前、やや混雑する時間帯に近所のスーパーマーケットに買い物に行き、列に並んで精算の順番を待っていたとき、次のようなことがありました。
私が普段の生活で買いものするスーパーマーケットでは、レジは有人であり、支払のみ、レジの背後(=レジ係から見て左側、いわば下流)にある専用の装置で行うことになっています。支払い装置の横には荷物を置く台があり、レジ係が、POSで読みとられた商品が入ったカゴを、読み取り機の横の台からそこまで運んでくれます。精算について同じような方式を採用しているスーパーマーケットは少なくないはずです。
ところで、私の順番が来ると、私は、私から見て読み取り機の左側(レジ係から見ると右側)の台にかごを置き、そのまま、読み取り機の裏側、つまり、読み取り機を挟んでレジ係と向き合う位置まで一歩だけ進み、その場に立ってレジ係が左のカゴに入っていたものを1つひとつPOSで読み取り、右のカゴに移すのを見守っていました。これは、私にとっては、スーパーマーケットでの買いものの決まった手順です。
ところが、私の次に並んでいた客には、私がレジ係の正面にとどまっているのが邪魔だったのでしょう——レジ係から見て読み取り機の左側の台には、カゴ2つ分のスペースがあり、精算中の客のカゴの他に、もう1つ、次の客のカゴもそこに置くことが可能です——読み取り機の左側の台にカゴを置くと、「そこでグズグズしていないでさっさと歩け」と言わんばかりに、しかし、実際には完全に無言で、私をカートで押そうとしました。(「先に進んでくれ」と求められた方がまだしもです。)しかし、私は、これをあえて無視し、左側のカゴの中味がすべて右側に移されるまで、その地点にとどまり、その後、精算の装置の前に移動しました。
私は、私をカートで押そうとした客の失敬な態度に憤慨しましたが、支払の装置を操作しながらその客の行動を眺めていて、その客の心の中がわかりました。というのも、その客は、荷物を読み取り機の左側の台に置くと、レジ係の前を素通りし、すぐに支払の装置の前に移動してそこで待機していたからです。この客にとり、これが自然な行動であり、レジ係の前に立つという私の行動は、理解不可能であったに違いありません。
しかし、売り場でピックアップした商品が入ったカゴをレジ係に預けたあと、レジの前を素通りして支払い装置の前に移動することは、スーパーマーケットにおける精算の方式の趣旨との関係では、決して好ましいことではありません。
なお、スーパーマーケットにおける精算の方式の大枠がアメリカで最初に定まった事情について情報を得ることができませんでした。したがって、以下は、完全に形式的な話になります。