※この文章は、「スーパーマーケットの有人のレジで精算を待つあいだ、客はどこに立っているべきか(その1)」の続きです。
スーパーマーケットでは、レジ係が必ず客の見えるところで精算を行います。そして、レジ係の作業をすべて目視で確認できることには重要な意味があります。すなわち、スーパーマーケットにおける精算とは、購入した商品と支払金額について、客とレジ係のそれぞれが間違いのないことを確認し、合意するための手続きなのです。
一方において、レジ係の仕事は、自分から見て右側(=客から見て左側)にあるカゴの中の商品の1つひとつの価格を漏れなく入力しながらその都度左側に移動させ、右側には何も残されていないことを最後に確認することです。
他方において、レジ係の動作を注視し、自分がカゴに入れた商品のすべてがレジ係によって入力され、反対側のカゴに移されたことを確認することが客の側の責務となります。
スーパーマーケットにおける精算とは、客にとり、本質的に「購入した商品と支払うべき金額を確定させる手続き」であり、レジにおける精算は、「レジ係と客の両方が結果について合意し、購入した商品と支払うべき金額が確定させる作業」なのです。
このような理解を前提とするかぎり、客が精算作業中のレジ係の動きから目を離すことは許されません。なぜなら、精算作業中のレジ係から目を離した場合、客は、購入した商品の内容や支払金額について異議申し立てする機会と権利を失うはずだからです。たとえば、買ってもいない商品がレシート上では買ったことにされたり、1つしか購入していない商品の代金が二重に請求されたりしても、形式的には、その責めは、精算作業を注視していなかった客に帰せられます。
以前、あるスーパーマーケットで買いものしたとき、精算にかかる時間の短縮のためなのでしょう、レジ係が、読み取り機の右側に私が置いたカゴをそのまま——つまりカゴごと——読み取り機の左側に移したのち、バーコードリーダーを手にとり、カゴの中にある商品を、カゴから出さずにスキャンし始めたことがありました。
しかし、これまで述べてきたことからわかるように、これでは、何がどのように入力されたのか、私には確認することができません。したがって、合計金額をレジ係から告げられても、これに同意することは不可能です。私は、即座に苦情を申し立て、商品を1点ずつ、私が見ている前で読みとらせる方式で精算をやりなおすよう求めました。
レジ係が商品の精算を客の目の前で行うことには重要な意味があります。客は、レジ係が商品を右から左へ(=客から見ると左から右へ)移す作業の一部始終が見えるところにとどまらなければなりません。これは、スーパーマーケットにおける買いものの掟なのです。