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エイトライナーの建設計画について(後篇)

by 清水真木

※この文章は、「エイトライナーの建設計画について(前篇)」の続きです。

 ところで、上に掲げた動画でエイトライナーについて語っているのは、練馬区の区議会議員の方のようです。主張は非常にシンプルです。「環状八号線の下に新規路線を建設するには1兆円を超える資金が必要になるが、既存のバス路線を活用することで、費用をかけずに同じ便益を期待することができる。1兆円の余裕があるなら、費用対効果が明らかな、かつ、優先順位が高い費目に使うべき。」上の動画で語られていることを大雑把に要約するなら、このようになります。さらに短縮するなら、「地下鉄がなければ、バスに乗ればいいじゃない」となるでしょう。

 たしかに、純粋に形式的に考えるなら、この意見は決して間違いではありません。ただ、「地下鉄がなければ、バスに乗ればいいじゃない」が有意味であるためには、バス路線が充実していることが必須ですが、残念ながら、現実には、環状八号線には、「バスがあるからエイトライナーの建設は不要」と明言することができるほどたくさんのバスが走っているわけではありません。

 この動画は、環状八号線にはすでに十分な数のバスの往来があり、十分な数のバス停があることを自明の前提としています。たしかに、練馬区に限るなら、この前提は大体において正しいようです。

 しかし、少なくとも杉並区の場合、北から南まで環状八号線に沿って縦断する単独の路線はありません。それどころか、環状八号線全体のうち、約4分の1には、そもそもバスが走っておらず、バス停もありません。

 また、バスの乗車運賃は、鉄道よりも割高であり、バスの「乗り継ぎ」が現実的ではありません。さらに、バスは、道路の渋滞により簡単に遅延します。(そもそも、交通量が非常に多い環状八号線を通る路線バスに地下鉄の代わりを期待する方が非現実的であるような気がします。)このような事情を考慮するなら、乗り換えを繰り返すことにより赤羽駅から羽田空港まで路線バスのみで移動することが可能であるとしても、地下鉄の建設はやはり望ましいことであり、政策としてのその優先順位は決して低くはないはずです。

 「地下鉄がなければ、バスに乗ればいいじゃない」という主張は、残念ながら、今のところは、「パンがなければ、ケーキを食べればいいじゃない」という発言と同じくらい現実離れしたものであるように思われるのです。

 もちろん、見方によれば、「地下鉄がなければ、バスに乗ればいいじゃない」という主張よりも、「エイトライナーを通せ」という要求の方がはるかに現実離れしているのかも知れないのですが。

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