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高級品を持つ資格について(前篇)

by 清水真木

 私が直接知る範囲では、「コレクション」というのは男性によく見られる趣味に属しています。

 もちろん、女性が何も収集しないわけではありません。しかし、女性のコレクションは、大抵の場合、大きな空間を必要とせず、かつ、普段の生活において自然な形で身辺に集まってくるものを選り分けることで形作られるものであるような気がします。広い意味における日常的な必要とは無関係に、保管のために手間や場所を必要とするようなものをそれ自体として収集する女性というのは、むしろ例外的な存在であるに違いありません1 。私には、原因はわかりません。

 女性とは異なり、男性のコレクションは、専用の空間、専用の資金を必要とすることが少なくないばかりではなく、収集の対象となる品物がそれ自体として高額である場合が少なくありません。プレミアムがつくようなものをあえて収集するというのも、男性に固有の傾向であるように思われます。

 最近、私の目を惹いたのは、腕時計のコレクションです。私が直接、あるいは、間接に知るかぎり、女性に腕時計のコレクターはいません。相当な数の腕時計を集めている女性がいるとするなら、それは、時計を専門に扱う古物商か、あるいは、芸能人、一部の企業経営者や政治家のように、公衆の面前に姿を現すとき、同じ腕時計を着けるわけには行かない職業に就いている女性でしょう。

 しかし、腕時計のコレクターについて見たり聞いたりするたびに、私の心には若干の疑問が浮かびます。というのも、コレクションの対象となるような腕時計というのは、相当に高額であり、よほどの金持ちではないかぎり、収集によって日常生活が少なからず圧迫されるはずだからです。コレクターが収集するような腕時計は、クォーツの数千円、数百円のものではなく、基本的には機械式の腕時計であり、世界的に有名なブランドのもとで製造、販売される腕時計には、安いものでも10万円程度、高いものなら数百万円の値段が付けられています。

 また、腕時計を身につける機会がどれほど多いとしても、また、左右の手首に同時に腕時計をつけるとしても、そもそも、24時間×365日のあいだに使うことができる腕時計の数には限界があります。したがって、高額な腕時計のうち、コレクターの手に渡ったものは、その本来の用途のために使われることなく、ただ、保管されるだけであると考えるのが自然です。(後篇に続く)

  1. なお、相当な数のハンドバッグや靴を所有する女性は珍しくありませんが、彼女たちは、これらをすべてあくまでも使用するために購入したのであり、この意味で、彼女たちをコレクターと見なすことはできません。 []

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