※この文章は、「『自転車には車道を走ってもらいたい』という意見について(前篇)」の続きです。
ところで、歩道の幅が狭いにもかかわらず、また、それなりの数の歩行者が歩道上にいることがわかっているにもかかわらず、あえて歩道に進入してくる自転車は少なくありません。私の経験の範囲では、車道を走行せず、歩行者でそれなりに混雑している歩道にあえて進入する自転車のうち、半分以上は、チャイルドシートが取り付けられた自転車です((子どもが実際にチャイルドシートに着席しているとはかぎりません。運転者はほぼ全員が女性ですが、男性が運転しているのを見ることもあります。))。チャイルドシートが取り付けられているなら歩道を走行してもよい、などというルールはどこにもないのですが、運転者の多くは、みずからにその許可を与えているようです。
また、チャイルドシートつきの自転車は、歩道でも速度を落とさないことが多く、歩道を歩いているとき、ものすごいスピードですぐ横をすり抜けられ、恐怖を覚えたことが何回もあります1 。チャイルドシート付きの自転車が速度を落とさない理由は、私にはわかりませんが、時間に追い立てられ、目的地に早く辿りつくことを望むのなら、車道を走る方が合理的ではないかと私は考えています。
自転車が原則として車道を走行しなければならないことは、道路交通法で定められたルールです。歩道というものは、このルールを俟って初めて歩道となるのですから、これは、歩行者の安全にとって必須のルールであると言うことができます。
歩道を走行する自転車が多いことの最大の原因は、車道が危険であることであるに違いありません。しかし、「車道を走るのが怖い」というのが歩道を走行する理由であるなら、そのような運転者は、そもそも、自転車を移動手段として用いるべきではありません。自転車による移動を前提として生活のスケジュールを組み立てるべきでもありません2 。東京都内の場合、どのような場合にも車道を走る勇気——あるいは無鉄砲さ——がない人が自転車を運転して歩道に進入することは、歩行者にとって迷惑と危険以外の何ものでもないからです3 。
- 歩道に進入する自転車の中には、老人が運転するものも少なくありません。しかし、老人の運転は大体においてゆっくりです。 [↩]
- チャイルドシートに子どもを乗せた自転車、特に電動アシスト付き自転車の危険、および、この危険を回避するための心がけや技術は、さまざまな観点から提案されています。
しかし、自転車の使用をそれ自体として見直すことの方が捷径であると私は考えています。 [↩]
- 私には、環状八号線や青梅街道の車道を自転車で走行する勇気がありません。だから、私は、今の場所で暮らすかぎり、自転車を運転しません。 [↩]