歩くことは健康に好ましい影響を与えると一般に考えられています。歩く距離、時間、速度、歩幅などについては、専門家により、最適な数値に若干の違いがあるようですが、それでも、ともかくも、心肺機能の強化、血圧の低下などの身体の健康、それどころか、知的生産にも効果が認められています。歩行に何らかの積極的な効果を期待することができる点に関するかぎり、すべての専門家の意見は一致しています。(いずれも「言い古されたこと」であるような気がしないこともありませんが。)
たしかに、「歩くだけでは健康を実現することができない」と語る専門家はいても、「坐りっぱなしでよい」「歩かない方がよい」ことを主張する者はいません。運動としての歩行には、メリットしかないようです。私自身もまた、歩行することが健康に有害であるとは思いません。
ただ、私は、近所を散歩することを好みません。椅子に坐りっぱなしの生活が健康に悪いとはわかっていても、自宅で仕事中に散歩する気にはなれません。近所に完全に飽きているのです。
現在、私は、生まれ育った場所で暮らしています。これまでの人生の大半、合計40年以上もここに住んでいます。当然、子どものころから現在までのあいだに、自宅を中心とする半径約1キロメートルの範囲は、歩き尽くしてしまいました。建物は入れ替わっても、道は基本的に変化しませんから、新しい発見というのはもはや期待することができないのです。
「近所の散歩に飽きた」というのは、散歩を習慣とする多くの人々が共有する悩みのようです。実際、「近所+散歩+飽きる」をキーワードに検索すると、解決策を提案する多くのページがヒットします。多くは、何らかの形の「遠出」を勧めていますが、この場合、行き先によっては、往復ともに公共交通機関を利用しなければならなくなり、仕事の合間に立ち上がってふらりと出かけるというわけには行かなくなります。
秋学期には、私は、「仕事で外に出たときについでに歩く」ことにより、近所を散歩しないことのささやかな埋め合わせを試みています。駿河台キャンパスで空き時間ができたときには、よほどの悪天候でないかぎり、毎週少なくとも1回、大学を起点として往復1時間から2時間の距離を歩いていました。(大学からは、たとえば上野の不忍池までが往復1時間、浜離宮庭園までが片道1時間です。)
しかし、秋学期の授業が終わってしまったら、これも続けられなくなります・・・・・・。