Home 世間話 他人のカネを預かる覚悟について(前篇)

他人のカネを預かる覚悟について(前篇)

by 清水真木

 しばらく前、次の記事を読みました。

 この事件については、これが11月にネット上で話題になり始めたころから、何となく最新のニュースを追いかけてきました。
 今はまだ、信頼できる機関が確定的なものとして公表した事実がなく、政府あるいは関係する地方公共団体もまた公式の見解を明らかにしていないからなのでしょう、テレビや新聞は何も報じていません。100パーセント確実とは言えない情報がネット上で飛び交っているだけです

 上に掲げたのは、それなりに信頼することができるネットメディアに掲載されたものとしては時間的に最初の記事であり、関連する記事は、これ以外には公開されていません。

 この問題について誰の目にも帰趨が明らかになるのは、早くても数ヶ月先でしょう。誰にもわかるような形で情報が整理され、全貌が明らかになるまでには、場合によっては、1年以上かかるかも知れません。したがって、今は、この事件——左翼にとっては「誹謗中傷」であり、それ以外にとっては「不正会計疑惑」となります——について論評することを控えます。

 ただ、11月以来のネット上での雑多な膨大な発言を眺めることにより、今回の事件がある点に関し教訓になりうるものであることがわかります。すなわち、ニュースに接した人々の多くは、他人のカネ、特に、税金を原資とするカネは、決して好い加減に扱ってはならないという点をあらためて確認したはずです。

 私は大学の教師です。他と比較したことがなく、断言することはできませんが、大学の教師の普段の生活の中では、少なくとも人文科学系の場合、自分のカネと他人のカネを峻別する必要を感じる機会は必ずしも多くはありません。これは、他人のカネを使っているという自覚に乏しいということではありません。(これは、むしろ、自然科学系の研究者の問題かも知れません。)そうではなく、そもそも、必要とするカネが自然科学系とくらべて少額であるため、「他人のカネ」から費用を支出してかまわないかどうか迷ったとき、大抵の場合、自腹で支払ってしまうことできなくはないからです。

 それでも、給与以外に学内外から支給される各種の研究費を使用する場合には、当然のことながら、領収書が必要です。(そもそも、会計の不正が起こらないよう、領収書の提出が必要となる「立て替え払い」でものを買うことはできるかぎり控え、大学が直に処理する「請求書払い」にしてもらいたい、と大学からは求められています。)また、研究費の区分により、支出することができるものが異なることがあります。たとえば、科研費では文房具を買うことができるが、大学から支給される研究費では文房具を買えない、というような不思議なことが起こります。あるいは、同じものを購入する場合でも、大学から支給される研究費なら「消耗品」として扱われるのに対し、科研費で購入すると「備品」扱いになる、などの違いもあり、それぞれ適切に領収書を用意し、適切に登録することが必要となります。当然、備品については、「設置場所」が厳しく制限されており、多くの大学は、公費で購入した備品を自宅に持ち帰ることを原則として禁止——大学によっては、ときどき検査があります——しています。(後篇に続く)

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