Home 世間話 万年筆の使い心地と値段の関係について(その1)

万年筆の使い心地と値段の関係について(その1)

by 清水真木

道具としての万年筆

 私は、普段の生活において、主な筆記具として万年筆を使っています。「ボールペン以外不可」のものを除き、ほぼすべての文字を万年筆で書いています。(下に続く)

 2023年1月現在、私の手もとには3本の万年筆があり、自宅で仕事するかぎり、3本すべてを1日に少なくとも1回は何らかの形で使っています。

 世の中には、収集と愛玩の対象としておびただしい数の万年筆を手もとに置く人がいるようです。しかし、私にとり、万年筆は、文字を書くための道具であり、それ以上でもそれ以下でもありません。したがって、万年筆を購入するのは「自分が」「使うため」であり、選択の基準となるのは、私の主な用途との関係における使いやすさだけです。

「万年筆がインクをケチる」とは

 ところで、万年筆の使いやすさというものは、どのような状況あるいは環境のもとで使用するかにより異なります。つまり、道具としての万年筆の「使いやすさ一般」なるものを記述することは困難であるように思われます。

 私の場合、万年筆の理想は、万年筆が自己主張しないことです。万年筆を握っている時間がながくなるのなら、万年筆のせいで読んだり書いたりする作業から注意が逸れてしまうことがない方がよいに決まっています。実際、書くことを阻碍するような万年筆の不具合というものに出会うことが少なくありません。万年筆に由来するノイズのうち、仕事にとってもっとも邪魔になるのは、インクが出なくなることです。十分な量のインクが充填されているにもかかわらず、書いている途中でインクが出なくなり、同じ線や文字を2度書くというのは、繰り返し発生すると、大きなストレスになります。「万年筆がインクをケチる」と表現されることもあるこの現象を回避する方法を求めて検索してみたのですが、この現象を取り上げたウェブページを見つけることはできませんでした。

万年筆に馴染むための手間

 毎日使用されており、かつ、十分な量のインクが充填されているにもかかわらず、インクが急に出なくなる原因は1つではなく、紙の質、筆記速度、持つ角度、筆圧、インクの性質、ペン先に集まってしまうケバなどの要素が複雑に組み合わせられて起こるものであるに違いありません。また、適当な紙、適当な筆記速度、適当な角度、適当な筆圧、適切なインクなどは、万年筆1本ごとに異なります。そして、その万年筆に固有のクセを知り、これに合わせて使い方を工夫することは、万年筆と仲良くなるために避けて通ることができないプロセスであり、これが万年筆の面白さであるように思われます。

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