Home やや知的なこと 占いと発達障害について(その1)

占いと発達障害について(その1)

by 清水真木

 最近、公共の言論空間において、発達障害1 が話題となる機会が増えました。発達障害に特別な関心を持たない人々でも、「発達障害」という言葉、あるいは、発達障害の類型に関する説明を目にすることが少なくないのではないかと想像します。私自身、発達障害に特に詳しいわけではありませんが、それでも、発達障害に3つの代表的な類型があることくらいは知っています。

 発達障害についての知識が公衆のあいだで共有されることは、それ自体としては好ましいことであるに違いありません。「普通」に行動することができない状態を「だらしない」「協調性がない」などと否定的に評価するのではなく、「標準」からズレた行動の背後にメンタルな特性をその背後に想定し、これを積極的に評価することは、社会の多様性と健全な発展を促すはずだからです。

 ただ、発達障害は、科学的な根拠にもとづいてこれ以外から明確に区別される特性です。したがって、私たち1人ひとりが発達障害であるかどうかは、精神科医の診断を俟って初めて確定します。つまり、発達障害は、勝手に自称してはいけないものなのです。

 それにもかかわらず、最近は、発達障害が馴染みのある観念となるとともに、精神科医の診断を受けることなく、「発達障害」を自称する人々をネット上で見かけます。

 たしかに、ASD、ADHD、LDに関する説明を読むと、誰でも、自分がこれらのうちの1つあるいは複数に該当するように思えてしまいます。世の中には、「完全に平均的な人間」など存在せず、誰にも多少の「偏り」があります。発達障害の類型のうち少なくとも1つに「当てはまらないと言えないことはない」ような気がしてしまうのはそのためです。むしろ、発達障害について説明を受け、自分がいずれの類型にも該当しないと断言する人の方が少数派でしょう。この意味において、発達障害を自称する人々が大量に発生することは、それ自体としては不思議ではありません。

  1. 以下の文章において、私は、「発達障害」という言葉を「自閉スペクトラム症」(ASD) 「注意欠如・多動症」(ADHD)「限局性学習症」(LD) の総称として用います。 []

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