私は、秋という季節を好みません。
特別な持病などない私でも、健康状態の微妙な変化はあります。そして、1年のうち、心身の状態がもっとも好ましくないのが秋、特に10月と11月です。大抵の場合、この間に1回は風邪を引きますし、風邪を引いていないときでも、気分はすぐれません。
9月の下旬、街頭の商店のディスプレーが秋の色に変わるころになると、少しずつ元気がなくなってきます。
10月1日になると、「早く春にならないかな」などと考え、翌年の2月末までの日数のカウントダウンを始めます。このころは、何をする気にもなれず、「布団をかぶって春まで寝ていたい」などという下らない願望が毎日のように心に浮かびます。
そして、11月が終わると、1年で最悪の時期を脱したことに安心します。
「冬季うつ病」のような気分の烈しい落ち込みが認められるわけではありませんが、それでも、暖かい時期の方が元気ではあります。
とはいえ、生まれたときから秋が嫌いだったわけではありません。秋になると元気が出なくなったのは、大学院の博士課程に進学してからであるように思われます。
4月に始まり3月に終わる1年をサイクルとして同じような生活を続けていると、秋、特に10月から11月を、その年度が終わりに近づき、次の年度への助走が始まる時期として認識するようになります。というのも、次年度に関係する各種手続きの締め切り、担当科目と時間割の確定、シラバスの作成などがこの時期に集中するからです。また、かつては、学会の開催や、各種補助金の申請、学会誌への論文の投稿の期限なども10月と11月に集中していました。
他の人々はよくわかりませんが、少なくとも私は、10月と11月になると、自分の現状と将来を否応なく考えさせられ、そして、自己嫌悪のあまり気が滅入ります。それにもかかわらず、不思議なことに、実行すれば確実に後悔するような碌でもないことを計画するのもまた、大体において10月か11月なのですが。
大学の世界に身を置いているかぎり、秋になると体調が悪化するのは仕方がないことなのかも知れません。