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マスクをつけない人々について

by 清水真木

 私は、外出するときには、たとえ5分間でも、必ずマスクをつけます。新型コロナウィルス感染症の流行以前から、寒い季節に外出するときにはマスクをつけていましたから、マスクへの抵抗はありません。2019年の11月下旬から現在までマスク生活をずっと続けています。

 また、私は、外出するときにマスクをつけたら、帰宅するまで原則としてはずしません。「出先でマスクを外す」ことにより、感染する可能性が非常に高くなるからです。

 しかし、最近は、街を歩いていると、マスクをつけない人々を見かけることが少なくありません。大抵の場合、マスクをつけない人々は、屋外を歩いているか、あるいは、自転車に乗っています。マスクなしの人を屋内で見かけることは、さすがに滅多にありません。

 マスクをつけないことが惹き起こす公衆衛生上の危険は、少なくとも2つあると一般に考えられています。すなわち、自分が新型コロナウィルスに感染する危険と、他人を新型コロナウィルスに感染させる危険を想定することができます。実際、マスクをつけない理由を尋ねれば、多くの人は、「すぐ近くに誰もいないから」と答えるでしょう。

 ただ、私自身は、すぐ近くに誰もいないとしても、自宅の外ではマスクをつけます。都会で生活しているかぎり、すぐ近くに誰かが急に現れる可能性がつねにあるからです。人混みには接近しないつもりでいても、よく知らない街で意に反して人混みのただ中に急に放り込まれる可能性もあります。どこに誰がいるか完全に予測することが不可能である以上、すぐ近くに誰もいないとしても、マスクは常時つけている方が安全であるというのが私の個人的な意見です。

 とはいえ、私は「マスク警察」になるつもりはありません。マスクをつけない人々には、それなりの事情や理由があるはずだからです。

 マスクが推奨されている理由と、マスクをつけないことによる周囲への影響(つまり負担や迷惑)を理解し、その上でマスクをつけないことをあえて選択するのであるなら、私たちは、この選択を尊重せざるをえません。

 このような状況のもとで私たちが犯しがちな誤りは、「マスクは必ず着用すべきか」「マスクを着用しないことで被る不利益を許容されるべきか」というような一般的かつ抽象的な問いを立てることです。このような問いにどのような答えを与えるとしても、それは、原則を繰り返し確認することにしかならないからです。

 具体的な場面、たとえばある職場においてマスクをつけない人と共存することが必要であるのなら、当事者たちがたがいの事情を考慮し、アイディアを出し合いながら柔軟に折り合い、その職場に最適なアドホックな解決策を発見して行く以外に途はありません。そして、本当の意味における民主主義とは、このような努力に他なりません。

 しかし、残念ながら、現代の日本人の多くは、当事者による話し合いの実践に熱心ではなく、相手の事情に立ち入ることなく単純に排除してしまうのが普通であるように私には思われます。残念ながら、平均的な日本人には、民主主義を支えるための十分なスキルがなく、「対等な立場で知恵を出し合う」ことが苦手なのでしょう。

 マスクをつけな人々に対する態度は、LINEを使わない人々への態度と重なるところがあるような気もします。

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