6月22日(水)に参議院議員の通常選挙が公示されました。争点が何もない、というわけではありません。それでも、政党によって意見が大きく分かれるトピックのうち、大きな争点として万人が考慮しなければならないものはないと言うことができます。この意味において、私のような素人には、今のところ、波乱要因の少ない「盛り上がらない」選挙であるように見えます。
ところで、今回の選挙では、「反ワクチン」に代表される「陰謀論」を掲げる政党(正確には政治団体)が候補者を立てています。ウェブサイトを眺めても、そこに掲げられているのは、「日本はいかにあるべきか」という点に関する遠大な展望ばかりであり、主な政党のあいだで争点になっているような具体的なトピックの1つひとつに関する立場を知ることは困難です1 。
大抵の場合、このような政治団体は、普通の政党が解決を標榜するような具体的な課題ではなく、抽象的なスローガンを掲げます。必要なのは、個別の問題を1つずつ現実に即して解決する地道な努力ではなく、すべてを一挙にかつ全面的に解決する革命なのだ、ということなのでしょう。上記の政党の場合、「デイープステート」の影響を排除することで、日本が抱えるさまざまな問題は一挙にかつ全面的に解消される、ということになるのかも知れません。(さすがに、ウェブサイトには「ディープステート」の文字は見当たりません。)
この政党に関しネット上に散見する「肯定的」な発言のかぎりでは、この政治団体の支持者たちは、「2020年のアメリカ大統領選挙において大規模な不正があった」「選挙の本当の勝者はトランプである」「ディープステートの陰謀である」など、陰謀論に属する一連の主張を信じ込んでいる層と大体において一致しているように見えます。
幸いなことに、このような陰謀論を真に受ける有権者は、いわゆる「ネトウヨ」と同じように、ネット上の「ノイジー・マイノリティー」にとどまります。したがって、このような勢力が日本の政治に対し目に見える影響を与えることはないはずです。それでも、今後、少なくとも何年間かは、選挙のたびに、現実を見失った「嘆かわしい人々」が話題になることに、私たちは耐えなければならないでしょう2 。
- 自由民主党も立憲民主党も日本維新の会も、なぜか揃ってまったく同じ分量——表紙を含めPDF12ページ分——の、具体的な数値目標を記した詳細な選挙公約を公表していますが、この文章が話題にしているような「諸派」の政治団体には、具体的な選挙公約がないのが普通です。 [↩]
- 狂信的な「反原発」の賞味期限が10年でしたから、陰謀論もまた、10年以内、つまり、2030年までには賞味期限を迎えると期待してよさそうです。 [↩]